がんサロンにて当院管理栄養士が、『春の皿には苦味を盛れ』の題目で話をさせていただきました。その内容をご紹介します。
皆さま、こんにちは。
少しずつ日差しが柔らかくなり、風の中に春の気配を感じる季節になりましたね。
今日は、古くから伝わる「春の皿には苦味(にがみ)を盛れ」という言葉をテーマに、
少しお話しをさせてください。
「春の皿には苦味を盛れ」 皆さまも一度は耳にされたことがあるかもしれません。
ふきのとう、タラの芽、菜の花…春の芽吹きには、独特の「ほろ苦さ」がありますよね。
なぜ、あえて苦いものを食べるのでしょうか。
冬の間、私たちの体は、寒さから身を守るためにギュッと縮こまり、エネルギーを溜め込もうとします。いわば「冬眠モード」に入っています。
そこに、春の山菜が持つ「苦味」が入ってくると、体は「あ、春が来たんだ!」とパッと目を覚まします。
この苦味成分は、ポリフェノールやアルカロイドという成分なのですが、冬の間に溜まった老廃物を外に出し、肝臓の働きを助けてくれる「デトックス」の力があると言われています。
昔から先人たちは、この苦味を「体への目覚まし時計」として、上手に暮らしに取り入れていたのですね。
闘病中で、特にお薬の治療などをされていると、「食べること」自体が大変な時期もあるかと思います。味覚が変わってしまったり、食欲が湧かなかったりすることもあるでしょう。
ですから、「栄養のために無理に食べなきゃ」と思う必要はありません。
もし、一口でも「あ、春の味がするな」と感じることがあったら、それは皆さまの体が、季節のリズムを感じている証拠です。
もし食べるのが難しければ、スーパーで並んでいる菜の花の鮮やかな緑を眺めたり、ふきのとうの香りをそっと嗅いでみたりするだけでもいいと思います。
「季節を五感で受け止めること」 それ自体が、ご自身の心と体を慈しむ最高のご馳走になります。
ここで、少しだけ心のお話をさせてください。
今、がんの闘病という「人生の苦味」とも言える時間を過ごされていて、それは決して楽なものではありませんし、時には逃げ出したくなるほど辛いことと思います。
けれど、春の山菜が土の中でじっと耐え、あの苦味を蓄えて力強く芽吹くように、今この時間を過ごしている皆さまの心の中にも、新しい「芽吹きの力」が確実に蓄えられています。
苦味を知っている人は、その分、小さな喜びや、人の優しさという「甘み」を、誰よりも深く、敏感に感じ取ることができるのではないでしょうか。
最後に、今日、お帰りの際にでも、道端に咲く小さな花や、八百屋さんの店先に並ぶ春を探してみてください。「あ、あそこに苦味があったな」と思うだけで、皆さまの心の中のスイッチが、少しだけ「春モード」に切り替わるかもしれません。
皆さまの心と体に、穏やかな春の光が降り注ぎますように お祈りしています。
今日はご清聴ありがとうございました。

